教員紹介

能川 泰治

nogawa-t2023

《専攻》    
日本近現代史

《研究テーマ及び自己紹介》
私は日本近現代史、その中でも特に都市史研究という分野を研究しています。本学に着任するまでは大阪におりましたので、1900~1910年代の大阪市における都市下層社会を研究対象にしていました。現在は、添田唖蝉坊という人物に注目して、都市下層社会と戦前の社会運動との関係を考えたり、分析対象とする時代を戦後の高度経済成長期にまで広げて、都市下層社会の労働・生活・意識のあり方を詳しく調べる一方で、そこから時代・社会の全体像をいかにして展望するかということを念頭に置きながら、研究を進めています。最近は、大阪城の近現代史を調べたことがきっかけで、近代都市における城の存在意義にも関心を持つようになり、豊臣秀吉のような都市建設の祖とされる人物の顕彰運動や、地域振興と都市文化形成との関連性も調べています。

《研究業績》
・「戦間期における「帝都」東京のデモクラシーと文化」(『日本史研究』475号、2002年、142~172頁)
・「両大戦間期の都市計画と都市文化」(奥田晴樹編『日本近代史概説』〈弘文堂、2003年〉101~117頁)
・「関東大震災後の「貧民」のデモクラシー」(平成12~14年度科学研究費補助金(基盤研究B‐2)研究成果報告書『近代日本の都市社会構造の総合的研究』〈2003年〉25~35頁)
・「地方都市金沢における米騒動と社会政策」(橋本哲哉編『近代日本の地方都市』〈日本経済評論社、2006年〉177~212頁)
・「加賀象嵌職人・米沢弘安の読書と歴史認識」(加能地域史研究会編『地域社会の歴史と人物』〈北國新聞社、2008年〉189~201頁)
・「大阪城天守閣復興前史」(大阪市史編纂所編『大阪の歴史』73号、2009年、83~116頁)
・「『歌う社会運動家』添田唖蝉坊の誕生」(『金沢大学文学部日本史学研究室紀要』2号、2010年、1~22頁)
・「釜ヶ崎の日雇労働者はどのように働いているのか」(原口剛・稲田七海・白波瀬達也・平川隆啓編『釜ヶ崎のススメ』〈洛北出版、2011年〉79~106頁)
・「聞き取り記録 ある日雇労働者の戦中・戦後(上)」(『史敏』8号、2011年、94~119頁)
・「聞き取り記録 ある日雇労働者の戦中・戦後(下)」(『史敏』9号、2011年、99~121頁)
・「日本現代史研究におけるオーラルヒストリーの可能性」(東田雅博・安部聡一郎編『金沢大学人文学類歴史文化学コースブックレット1 歴史学の可能性』〈金沢大学、2012年〉37~52頁)
・「高度経済成長期以降の大阪・釜ヶ崎における高齢者の生存と共同性」(『歴史学研究』901号、2013年1月、17~26頁)
・「十五年戦争と大阪城」(京都大学人文科学研究所『人文学報』104号、2013年3月、91~112頁)
・「「軍都」金沢における陸軍記念日祝賀行事についての覚書」(『地方史研究』364号、2013年8月、49~52頁)
・「現場から学ぶことの大切さ―書評 吉村智博『近代大阪の部落と寄せ場―都市の周縁社会史―』」(『部落解放』681号、2013年8月、98~105頁)
・「添田啞蟬坊―「民衆」として生きた知識人」(趙景達・原田敬一・村田雄二郎・安田常雄編『講座東アジアの知識人第2巻 近代国家の形成』〈有志舎、2013年11月〉263~282頁)
・「釜ヶ崎での聞き取りから学んだこと」(『歴史地理教育』821号、2014年7月、68~69頁)
・「鳥取・松江の連隊誘致と陸軍記念日」(坂根嘉弘編『地域のなかの軍隊5 中国・四国 西の軍隊と軍港都市』〈吉川弘文館、2014年11月〉81~103頁)
・「高度経済成長期の大阪・釜ヶ崎に生きた警察官の詩と随想-文芸サークル「裸の会」の活動を事例に―」(『金沢大学歴史言語文化学系論集 史学・考古学篇』8号、2016年3月、1~14頁)
・「松尾尊兊『大正デモクラシー』を読み直す-その批判的継承のために-」(『日本史研究』648号、2016年8月、36~55頁)
・「添田啞蟬坊論―都市下層社会と大正デモクラシーに関する研究として―」(『歴史学研究』955号、2017年3月、1~17頁)
・「滑川・水橋における1918年米騒動の社会史-その基礎的考察-」(滑川市立博物館『米騒動100年-滑川から全国へ-』〈2018年7月〉70~71頁)
・「コラム 岡本一平の描いた1918年米騒動」(滑川市立博物館『米騒動100年-滑川から全国へ-』〈2018年7月〉64頁)
・「1918年米騒動を問い直す-その歴史的意義再考のために-」(『歴史地理教育』880号、2018年6月、10~15頁)
・「神国大博覧会開催計画とその行方-昭和初期における松江観光都市化戦略とその帰結-」(高木博志編『近代天皇制と社会』〈2018年10月〉221~248頁)
・北日本新聞社編集局編『米騒動100年』(北日本新聞社、2018年12月)
執筆担当部分 159~161頁、174~176頁、183~185頁
※『北日本新聞』の連載「米騒動再見 発生から100年」の再録

《担当授業》
・日本史学演習Ⅰ(通称近代ゼミ)(前期・後期)
重要史料を講読することを通じて、史料読解力を養成することを目標としている。後期の演習では、戦争体験の聞き取り調査にも取り組んでいる。文字で書かれた文献にしろ、言葉で語られた証言にしろ、史料を読解することは単に内容を要約することではなく、要旨を抑えたうえで「史料が語っていることは何なのか」という問いを立て、史料と対話していくことであることを、受講生に伝えたいと考えている。この点は、私自身にとっても生涯の課題である。

・日本史学特殊講義(前期)
この講義では、自分が現在取り組んでいる研究課題を講義テーマに設定し、先行研究や史料を読んで考えたことを受講生に伝え、最終的に自分の見解をまとめることにしている。私の研究手法が、受講生が研究するうえで何らかの参考になればと考えている。

・共通教育科目(後期)ただし1年生対象
題目は「歴史学と現在」。歴史学は、単に過去の事実を調べるものではなく、現在と深い関わりをもつ学問である。入門的内容の必読文献を紹介しながらそれを伝えることを目的としている。