教員紹介

吉永 匡史

<専攻>
日本古代史、日中律令制

<研究テーマ>
・古代日本と中国(唐・宋)の律令制比較研究
・北宋天聖令の研究
・律令国家の軍事体制
・古代日本と唐王朝の交通検察体制
・古代日本における賤民制
・古代日本における漢籍の受容形態

<自己紹介>
 私の専門分野は日本古代史で、とくに律令制に関心をもって研究に取り組んでいます。律令制は、8世紀以降の古代国家の基本システムであり、当時の国家を律令国家ととらえていることは、このページを御覧のみなさんも日本史の教科書で学んだことと思います。そのため、律令制研究は律令国家の本質にかかわってきます。

 ところがこの律令は、日本で全く新たに生み出されたものではなく、中国で成立・発達したものです。日本は当時の中国、すなわち唐王朝の律令を継受・改変して、独自の律令を制定しました。こうなると問題になるのは、そもそも唐王朝の律令がどのようなものであったのか、そして日本が唐の律令を継受した際に、どこに手を加え、どこをそのままにしたのか、という点です。藍本である唐王朝の律令は、当然そのままでは日本に適用できませんから、日本の実情に合うように手を加える必要があります。この継受の状況を考察することで、日本の国家体制や統治システム、為政者が対峙する古代社会の様相に迫ることができるのです。さらに、モデルとした唐王朝と比較することで、日本の古代国家の特色を浮き彫りにすることが可能となります。中国で発達した律令制のシステムは、日本を含む東アジアの周辺諸国に大きな影響を与えました。そのため、この律令制を媒介にすることで、日本史という枠組にとどまらず、東アジア全体の中で古代日本を位置付けることができるのです。

 とはいえ、律令制と一口に言っても、その内容は多岐にわたります。そこで私は、律令国家の軍事力、関所に代表される交通検察、身分秩序における賤民制、中国文化(とくに漢籍)の受容、といったテーマを取り上げ、具体的に研究してきました。そしてこれらは全て、あくまで古代日本を研究の中心としつつも、モデルとした唐王朝との比較検討を行うことで日本を相対化し、世界史上における古代日本の特質を解明することも目的としています。1つのテーマを深く掘り下げていくことはもちろんとても大切ですが、古代日本の歴史像を豊かに解明するためには、研究者の個人レベルでも、多角的な研究が必要だと考えています。

 縁あって、ここ金沢の地で研究・教育に取り組むことになりました。石川県は、河北郡津幡町の加茂遺跡をはじめとして古代の地方社会を考える上で重要な遺跡が多く、興味深い文字資料(木簡や墨書土器)も出土しています。今後は、地域に根ざした古代史研究にも精力的に取り組んでいく予定です。

<研究業績>
・『岩波講座日本歴史 第4巻 古代4』(大津透・桜井英治・藤井譲治・吉田裕・李成市編、共著、岩波書店、2015年)
・『古代中国・日本における学術と支配』(榎本淳一編、共著、同成社、2013年)
・『律令制研究入門』(大津透編、共著、名著刊行会、2011年)
・『日唐律令比較研究の新段階』(大津透編、共著、山川出版社、2008年)
・「天聖捕亡令と身分制 -奴婢関連規定を中心に-」(『唐代史研究』17号、2014年)
・「律令制下における関?の機能」(『日本歴史』774号、2012年)
・「唐代における水関と関市令」(『工学院大学研究論叢』50篇2号、2012年)
・「律令軍団制の成立と構造」(『史学雑誌』116編7号、2007年)   など