教員紹介

上田 長生

<専攻>
日本近世史

<研究テーマ>
・加賀藩領社会の支配・運営と十村
・幕末維新期の陵墓と村・地域社会

<自己紹介>
私が、卒論以来取り組んできたのは、天皇陵をはじめとする陵墓の問題でした。普通、陵墓といえば、古代史や考古学の問題かと思われますが、私は、陵墓が幕末維新期に探索・修復され、新たな祭祀が行われる様相と、それが陵墓周辺の人々に与えた影響を検討してきました。これによって、幕末維新期の村・町の人々が天皇・朝廷をどのように見ていたのか、近世の天皇・朝廷は社会とどのような関係を取り結んでいたのかを明らかにしようとしてきました。また、陵墓を探索し、考証・治定した考証家たちの営みや対立に焦点を当て、近代天皇制を支えるイデオロギー装置としての陵墓体系がいかに形成されたのかを研究しました。
 本学に赴任してからは、石川県・富山県に数多く残る十村文書を調査し、十村による加賀藩領社会の運営を研究しています。現在は、十村の寄合の場であった相談所や十村の身分、地域的入用である万雑などについて分析を進めています。また、近年発見された城下町金沢の蔵宿の文書整理・分析も進めており、蔵宿と加賀藩給人との関係、米穀流通のあり方についても関心をもっています。近年、加賀藩の藩領村々・都市の研究は、必ずしも盛んとはいえません。未解明のことが山積みですが、少しずつ加賀藩領社会に生きた百姓・町人の姿を描いていきたいと考えています。

<著書・研究業績>
・『幕末維新期の陵墓と社会』(思文閣出版、2012年)
・『歴史のなかの天皇陵』(高木博志・山田邦和編、共著、思文閣出版、2010年)
・『世界遺産と天皇陵古墳を問う』(今尾文昭・高木博志編、共著、思文閣出版、2016年)
・『鍋屋文書目録』(編著(加賀藩研究ネットワーク調査協力)、第七回北陸銀行若手研究者助成金研究成果報告書、2016年)
・「近世都市の成り立ち」(『歴史評論』813、2018年)
・「近代陵墓体系の形成―明治初年の陵墓探索・治定と考証家―」(『日本史研究』600号、2012年)
・「幕末期の大阪湾警衛と村々」(『大塩研究』68号、2013年)
・「陵墓と朝廷権威―幕末維新期の泉涌寺御陵衛士の検討から―」(『歴史評論』771、2014年)
・「篠山藩青山家文書にみる大坂城代時代の絵図―概要の紹介―」(鳴海邦匡氏と共著『大阪の歴史』72号、2009年) など