歴史探訪

本の紹介

三宅和朗『時間の古代史』(吉川弘文館、2010)

 本書は日本古代ノ神話や神祇祭祀の研究から古代の人々の心を研究している三宅氏の著書です。古代の人々にとって昼と夜は異質な時間としてとらえられ夜は人間以外が活動する時間であると考えられていました。本書では古代に成立した説話や伝承を用いて夜とは古代の人々にとってどのような時間であったかを探っています。そして古代の朝と夕についても古代の史料を論じられ、王権祭祀の記録を手掛かりにして古代における昼間の意義についても論じられています。様々な史料を用いて古代の人々が時間に対してどのように感じていたかを探ることで本書を通じて現代とは全く違う時間感覚が見えてきます。

 

黒田俊雄 『寺社勢力―もう一つの中世世界―』(岩波新書 1980)
 中世の寺社勢力といえば天台宗、真言宗、鎌倉新仏教などが思い浮かぶと思います。ですが中世を動かしていく寺社勢力は大寺院だけではなかったのです。また、地方の寺社勢力にもスポットが当たり、知らなかった寺社の姿を垣間見ることもできます。聖、別所、氏寺や村堂などでは触れられていない中世の宗教事情を覗いてみましょう。

 

磯田道史 『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕府維新』(新潮新書 2003)
 映画にもなっているので、名前を聞いたことがある人もいることでしょう。この本は幕末~明治期の加賀藩下級武士の帳簿や書簡などから武士の生活や風習を分析している本です。歴史学者の書いた本ですが一般向けなので読みやすく、歴史学というものを知るきっかけにできる本だと思います。しかも舞台は加賀藩。金沢大学日本史研究室に興味をお持ちのあなた、ぜひ読んでみてください!

 

家永三郎 『戦争責任』(岩波書店 1985)
 戦後、初めて日中・太平洋戦争によって引き起こされた様々な被害の責任を、天皇から一般国民に至るまで詳細にわたって検討・追及した本です。この本では、戦後に生きる私たちもあの戦争についての歴史的責任が追及されています。歴史学が過去に埋没するものではなく、今を考える際に必須である点を理解して頂けると幸いです。